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  • Jun

メリーゴーランド京都さま


 あの頃、10年後も店があるなんて想像もできやんかったね。オープンしてしばらくは近くから遠くからたくさんの人が店を見に来てくれたし、「おめでとう」って言ってくれたし、嬉しい日が続いたんやけど、いつの間にか静かになって、誰もお客さんが来ない日は決して珍しくはなくて、自分で本を買ってレジを打ってなんとか売上が0だけは避けようともがいてみたりしていたね。

 ずっと一人で店番をしていたから、お弁当はカウンターでパソコンに隠してこっそり食べて、トイレは電話を持ってダッシュで行ったり、居合わせた知り合いにお店番を頼んだりしてしのいだりしてたな。風邪をひいてしまった日は1日が長くて長くて「もう店閉めて帰ろか…」と思いながらも、もし今お客さんが来たらあかんしなあと頑張ったり。

 オープンした頃よく来てくれた親子と知り合って、偶然その子の誕生日が私と同じだもんだからすっかり嬉しくなって、私が一番初めに名前を覚えた大切なお客さんになったんやに。

 毎年の開店記念日は、いつもお祝いの葉書をくれるお客さんの便りで気がついて、記念日に疎い私はいつもすっかり抜けていたりしてた。

 けれど、今日はなんか違うな。

 今日は麻子さんが四日市に出張だから、一人で店を開けて1日一人。おめでとうのお花が朝から届いて受け取るたびに深く感動する。

 こんな風の強い日に朝からちらほらとお客さんが来てくれて、本棚を眺めて本を買ってくれる。いつもの1日。でも特別な1日。

 大変なことも、びっくりするようなことも、悲しいことも、嬉しいことも、怒ったことも、泣いたこともぜーんぶこの店で起こった全てのことは私の宝物や。

 たくさんの出会いを連れて来てくれた店。

10才、ほんまにおめでとう。

明日からもどうぞよろしくね。


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